管理医師のブログ

2014年3月21日 金曜日

Ca拮抗剤への疑義?(尼崎循環器内科医が答えます)

「カルシウム拮抗剤を内服している患者さんのほうが心筋梗塞をより多く発症している」と1995年の論文でPsaty らによって報告されたことから、このようなご心配が広がっているものと思います。(Journal of the American Medical Association,1995)
2014年3月現在、STAP細胞の存在について大騒ぎになっていますが、この騒動で佐々木が『良かった。』と思うのは論文というのは『結論として報告されるわけではない。』ということが周知されたことだと考えます。論文が発表されることで関心が高まり、いろんな研究者が検証することで、さらなる科学的な高みに昇っていくという過程が、大事なんです。佐々木も何本か英語で論文を仕上げていますが、さいわいにと言うべきか?残念なことにと言うべきか?STAP細胞のような論争は巻き起こしませんでした。身の丈に合った論文だったんでしょうね。
さて、Psaty らの論文ですが、症例対照研究(case control study)という手法に分類されます。心筋梗塞を発症した高血圧の患者さんと心筋梗塞を未発症の高血圧の患者さんとを比較するという研究だったのですが、カルシウム拮抗剤を内服していた患者さんにすでに狭心症を合併症として持っている方が多かったことがわかっています。病気の事に詳しい方はここで「なるほど」と思われるかもしれませんが、狭心症は心筋梗塞の一歩手前ですし、逆の見方をすれば、カルシウム拮抗剤は降圧剤(血圧を下げる薬)ですが、あわせて狭心症の治療にも適応があるので、佐々木もよくこのような処方をさせていただくのですが、狭心症を持っているかもしれない、もしくは、すでに狭心症を持っている高血圧の患者さんには、二つの疾病に効果が期待できるカルシウム拮抗剤です。米国のドクターの処方の書き方も日本と変わりません。二つの疾病に効果を期待するという治療方針の下、カルシウム拮抗剤が選択されたのでしょう。
『カルシウム拮抗剤を内服している患者さんに狭心症を合併する患者さんが多く紛れ込んでしまっていたので、狭心症が増悪して発症する心筋梗塞にまで至ってしまった患者さんも必然的に多くなってしまった。』と解釈するのが適切でしょう。このように研究の初期設定の段階(患者さんを選び出す段階)で、すでに偏りがあることが結果に大きく影響を与えてしまうことがあります。ちなみに、この偏りを"バイアス"と呼びます。
「ふんふん、そこまではわかった。でも結局、心筋梗塞になってしまうの?」という疑問がでてきますよね。そこは我々にとって辛い、いえいえ、患者さんにとってもっと辛いことなんですが、心筋梗塞の発症を内服加療によって先延ばしすることまでは出来るのでしょうが、発症を完全に阻止するまでのことは出来ません。でも重篤な疾患の発症を先延ばしすることが出来れば、寿命も延びます。我々、循環器内科医だけでなく、ほかの分野の医師の努力も相まって日本は長寿世界一を達成できているのです。だからそこは「でも結局、心筋梗塞になってしまうの?」なんてネガティブな方向にもっていかないでください。お願いします。
(記載、管理医師;佐々木)

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投稿者 医療法人社団ささきクリニック

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