循環器内科医とはずがたり

2014年3月15日 土曜日

出アフリカ と 高血圧症(2/2)(尼崎循環器内科医講話)

"出アフリカ"の結果、北に向かったヒトは白人種(コーカソイド)となり、ヨーロッパに定住。一方、東に向かったヒトは黄色人種(モンゴロイド)となり、アジアに広く分布、さらにベーリング海峡を渡って、北米→南米まで生活圏を求めました。アジア人は前回も述べました通り、ナトリウムを体内に保持する遺伝子を "出アフリカ"の過程で徐々に捨てていったと思われますが、日本列島では加えてやや特殊な事情があるようです。この日本の特殊な事情を簡単に(歴史の専門の方からはおおざっぱ過ぎるとお叱りをうけそうですが・・・)説明してみます。 
数万年前、当初、日本列島に住み着くようなったのは、黒潮にのってやってきた太平洋・東南アジア系のアジア人で、彼らのことを縄文人と表現して良いでしょう。その後、約3500年前(?、諸説あるようです)に大陸→朝鮮半島から南下してきて日本列島に住み着くアジア人が現れ、彼らのことは弥生人と表現して良いでしょう。
弥生人は、日本列島に降り立つ前、北方で生活するうちに、ナトリウムを体内に保持する遺伝子を縄文人より早期に捨てていったと推測します。前回、北米の例でも触れましたが、寒帯での生活では、この遺伝子を持つことは高血圧→脳卒中を発症、結局、生存には不利にはたらき、自然淘汰されることになります。したがって、黒潮文化の縄文人がナトリウムを体内に保持する遺伝子を高い確率で持っていたと考えられるのに対して、大陸文化の弥生人がこの遺伝子を持つ確率は縄文人よりは低かったであろうことが推測されます。
弥生人の南下で生じた異文化の出会いは、当初、縄文人と弥生人の間でイサカイをも生み出したようですが、やがて共存→混血も進んでいきます。したがって、もともとの日本列島先住民である縄文人の血(遺伝子)は弥生人によって薄められたとはいえ、日本人はナトリウムを体内に保持する遺伝子を持つヒトが多い民族といえます。
最近は夏もエアコンが快適な環境を提供してくれますので、ナトリウムを体内に保持する遺伝子に起因する食塩感受性高血圧はこれからも増え続けるでしょう。日本の縄文遺伝子を持つ人の高血圧症も米国におけるアフリカ系住民(黒人)の高血圧症と同じ事情なのです。
(記載、管理医師;佐々木)

このエントリーをはてなブックマークに追加
このエントリをlivedoorクリップに登録
このエントリをBuzzurlにブックマーク
Deliciousにブックマーク

投稿者 医療法人社団ささきクリニック | 記事URL

2014年3月 8日 土曜日

出アフリカ と 高血圧症(1/2)(尼崎循環器内科医講話)

皆さんはアメリカ合衆国のアフリカ系住民(黒人)に高血圧症が多いということを聞いたことがありますか?...
それでは"出アフリカ説"という学説をご存知でしょうか?ザックリ言うと、すべての人類の起源はアフリカ大陸である、という内容なのですが、これとは別の出アフリカが16世紀から19世紀にかけて起こります。アフリカ大陸から北米大陸に向けて、労働力を確保するという経済活動を目的として、黒人奴隷が運ばれます。熱帯から寒帯に強制的に移住させられたのです。
熱帯では大量に汗をかくことを容易に想像できると思いますが、これは同時に塩分(ナトリウム)を大量に喪失することを意味します。ナトリウムの喪失によって、血圧が維持できなくなった場合には、生命の危機まで覚悟しなくてはいけません。熱帯という過酷な環境ではナトリウムを体内に保持する遺伝子を持っているほうが生存に有利になるわけです。アフリカに生まれついた黒人は、先祖代々このナトリウムを体内に保持する、熱帯で生存するのに有利な、遺伝子を持っていたことが推測されます。
しかしながら、この遺伝子を保持することは寒帯の北米大陸では不利に働きます。汗をかきにくい環境では、体内に過剰にナトリウムを保持することで、白人(コーカソイド)系の住民より高率に高血圧症を発症してしまいます。これがアメリカ合衆国のアフリカ系住民(黒人)に高血圧症が多い理由と言われています。
もっと過激な説では奴隷を運ぶ船内の過酷な環境(炎天下に塩も水もあたえられなかったとのこと)を生き延びる際に、ナトリウムを体内に保持する遺伝子を持たない奴隷は淘汰された(北米にたどり着くことなく、船中で死亡することを意味します)のではないか?とまで書かれています。佐々木もこれはさすがに可哀想すぎるかなぁと否定したい気持ちです。
ここで冒頭の"出アフリカ説"に関わってくるのですが、人類の祖先は共通とされ、この熱帯に出現したわけですから、当然、過酷な環境下にあったものと推測します。ですから祖先はほぼみんなこのナトリウムを体内に保持する遺伝子を持っていたはずですが、"出アフリカ"の過程(日本人にとってはアフリカ→東アジアの移動の過程)でこの遺伝子を徐々に捨てていきます。今もアフリカに居住する黒人よりもこの遺伝子を持つ率は少なくなったとは言え、我々日本人も少なからず、この遺伝子によって高血圧症を発症させられているのです。
(記載、管理医師;佐々木)
このエントリーをはてなブックマークに追加
このエントリをlivedoorクリップに登録
このエントリをBuzzurlにブックマーク
Deliciousにブックマーク

投稿者 医療法人社団ささきクリニック | 記事URL

アクセス


大きな地図で見る
【住所】
〒660-0827
兵庫県尼崎市西大物町12-41
アマゴッタ4階医療センター

お問い合わせ 詳しくはこちら