管理医師のブログ

2014年3月30日 日曜日

高血圧の原因は動脈硬化?(尼崎循環器内科医が答えます)

ん~、違います。動脈硬化で血圧は上昇しません。
下図を見て頂ければ理解しやすいと思いますが、ヒトの体循環は電気回路に例えられます。

電池→心臓;これは詳細な説明は不要ですよね。心臓は血液を送り出す源です。電池だって電気を送り出す源って意味で、電源って呼び方もありますからね。電池にかかるのが電圧で、心臓にかかるのは血圧です。どうです?名称もぴったり重なるでしょう。
導線→血管;導線を流れるのは電流で、血管を流れるのは血流です。ここからがちょっとむつかしい。皆さんが考える血管というのは眼に見える大きさのものです。細血管~毛細血管はまず眼に見えません。毛細血管の直径...10μm程度というと、1mmの百分の1...まず肉眼では見えません。この肉眼で見えないような血管が電気回路で言う抵抗として働きます。抵抗として働く細血管~毛細血管のことを抵抗血管と呼びます。

ですから、抵抗→抵抗血管に相当するわけです。
さて、ここで中学校の理科で学習したことを思い出しましょう。
Ω(オーム)の法則...すぐに公式が出てきますか?電圧=電流×抵抗(E=IR)ですね。電流が一定ならば抵抗の値が大きければ電圧が大きくなるという公式ですね。血圧の世界にも、ほぼこの公式が当てはまって、血圧=血流×抵抗血管と考えていいわけです。ですから血圧上昇は抵抗血管の抵抗が大きくなった時に起こるのです。
何度も強調しますが、導線は電流を通すだけの通り道であるのと同じく、血管は血液が流れるだけの管に過ぎません。肉眼で見えるくらいの血管は先ほど述べたように、電気回路では導線ですから、血圧上昇には関わりません。
動脈硬化は肉眼で見えるくらいの動脈という血管に起こるものです。しかも高血圧が長時間続くことで、高血圧の結果として起こるものです。決して動脈硬化が高血圧を引き起こすものではありません。
(記載、管理医師;佐々木)
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2014年3月27日 木曜日

Ca拮抗剤の副作用?(尼崎循環器内科医が答えます)

カルシウム拮抗剤を内服している患者さんの発癌率が有意に大きいとPahor ら(Lancet,1996)が報告しました。服薬期間が長いほど発癌率が大きかったのなら、本当に相関があるんだろうけど、その記載がないとか、ツッコミどころはたくさんあるようで、いまだに決着していないようです。製薬会社のホムペには反証(Jick Hら Lancet , 1997)が記載されていたりします。
ただ、いまだに乳癌との因果関係(Christphar ILら Journal of the American Medical Association, 2013)や口腔外科領域の癌との因果関係(Friedman GDら Archives of Internal Medicine, 2012)などが報告されていることを考慮すると、この論争はまだまだ続きそうです。「2014.03.21ブログ...問題ないの?(1/2)」でも触れましたように論文って絶対的なものではないですからね。
カルシウム拮抗剤が広く使用されるようになったのは佐々木世代が研修医の頃。充分なデータの蓄積がないという意味ではおそらく我々が決着をつける世代ではないんでしょうね。後世のドクターの仕事になると思います。 
そういえば、カルシウム拮抗剤と胃腸障害の因果関係について述べた論文(Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, 2012)もあり、これについても、ドクターの間では賛否両論あるようです。発癌は将来の話で、現実に眼の前でおこっていない話ですが、このように実際に患者さんが眼の前で副作用を思わせる症状(胃腸障害などはその代表だと思います)を訴えていらっしゃるのなら、『○○先生の論文によると、そんな副作用はあり得ないです。』なんてことを言う立場はとりません。まず佐々木は患者さんの訴えに耳を傾けると思いますね。だって佐々木は学者や研究者じゃなくて、臨床医ですから。試験管の世界に生きているんじゃなくて、現実の世界に生きているんですから。後世のドクターが学術的な決着をつけてくれたらいいんです。
副作用を思わせる症状があるのなら、ドクターが代替の処方を提案することで患者さんの安心に貢献できると考えます。頑固に「黙ってオレの処方を飲め!」って怒ったりするのは「生きた化石」先生ですよね。代替の処方を提案しようとすれば、大事なのはバックアップの薬。バックアップの薬を作り出すことは、新薬を開発する行為そのものです。これが当診療所の治験/臨床試験に協力している大きな理由です。
(記載、管理医師;佐々木)
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2014年3月21日 金曜日

Ca拮抗剤への疑義?(尼崎循環器内科医が答えます)

「カルシウム拮抗剤を内服している患者さんのほうが心筋梗塞をより多く発症している」と1995年の論文でPsaty らによって報告されたことから、このようなご心配が広がっているものと思います。(Journal of the American Medical Association,1995)
2014年3月現在、STAP細胞の存在について大騒ぎになっていますが、この騒動で佐々木が『良かった。』と思うのは論文というのは『結論として報告されるわけではない。』ということが周知されたことだと考えます。論文が発表されることで関心が高まり、いろんな研究者が検証することで、さらなる科学的な高みに昇っていくという過程が、大事なんです。佐々木も何本か英語で論文を仕上げていますが、さいわいにと言うべきか?残念なことにと言うべきか?STAP細胞のような論争は巻き起こしませんでした。身の丈に合った論文だったんでしょうね。
さて、Psaty らの論文ですが、症例対照研究(case control study)という手法に分類されます。心筋梗塞を発症した高血圧の患者さんと心筋梗塞を未発症の高血圧の患者さんとを比較するという研究だったのですが、カルシウム拮抗剤を内服していた患者さんにすでに狭心症を合併症として持っている方が多かったことがわかっています。病気の事に詳しい方はここで「なるほど」と思われるかもしれませんが、狭心症は心筋梗塞の一歩手前ですし、逆の見方をすれば、カルシウム拮抗剤は降圧剤(血圧を下げる薬)ですが、あわせて狭心症の治療にも適応があるので、佐々木もよくこのような処方をさせていただくのですが、狭心症を持っているかもしれない、もしくは、すでに狭心症を持っている高血圧の患者さんには、二つの疾病に効果が期待できるカルシウム拮抗剤です。米国のドクターの処方の書き方も日本と変わりません。二つの疾病に効果を期待するという治療方針の下、カルシウム拮抗剤が選択されたのでしょう。
『カルシウム拮抗剤を内服している患者さんに狭心症を合併する患者さんが多く紛れ込んでしまっていたので、狭心症が増悪して発症する心筋梗塞にまで至ってしまった患者さんも必然的に多くなってしまった。』と解釈するのが適切でしょう。このように研究の初期設定の段階(患者さんを選び出す段階)で、すでに偏りがあることが結果に大きく影響を与えてしまうことがあります。ちなみに、この偏りを"バイアス"と呼びます。
「ふんふん、そこまではわかった。でも結局、心筋梗塞になってしまうの?」という疑問がでてきますよね。そこは我々にとって辛い、いえいえ、患者さんにとってもっと辛いことなんですが、心筋梗塞の発症を内服加療によって先延ばしすることまでは出来るのでしょうが、発症を完全に阻止するまでのことは出来ません。でも重篤な疾患の発症を先延ばしすることが出来れば、寿命も延びます。我々、循環器内科医だけでなく、ほかの分野の医師の努力も相まって日本は長寿世界一を達成できているのです。だからそこは「でも結局、心筋梗塞になってしまうの?」なんてネガティブな方向にもっていかないでください。お願いします。
(記載、管理医師;佐々木)
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2014年3月18日 火曜日

平成26年度在宅診療報酬改定(尼崎循環器内科医雑感)

平成26年度の診療報酬改定について触れてみたいと思います。当診療所は在宅療養支援診療所の基準を満たしていて、訪問診療もしているのですが、「保険診療上の不適切事例」が存在するからという理由で、在宅時医学総合管理料としてこれまで4200点を算定していた「同一建物」の患家はこの4月からは1000点まで切り下げられることになりました。
「同一建物」というのが、むつかしい言い回しですね。つまり、有料老人ホームとか、グループホームとか、一部屋一部屋が個人の住宅とみなすことができる介護施設と説明すれば、理解しやすいでしょうか。不適切な保険診療をしていた疑義のある診療所があるのなら、まず当該診療所への指導などから始めるのが一般的と考えますが、一気に軒並み診療報酬を1/4にしちゃうなんて「同一建物での保険診療がすべて不適切だった。」ということを厚生労働省が認定してしまったことになりはしないでしょうか?当診療所は「同一建物」の患家も「同一建物以外」の患家(個人患家)も両方お世話せていただいていますが、「同一建物」の患家での診療行為がぜ~んぶ「不適切」とレッテル貼りされてしまったみたいで残念です。施設入居中の患家を訪問する際に何か悪いことをしているような、そんな、ウシロメタイものを地域医療を支えている診療所に感じさせるような表現は回避していただきたいと切に希望します。せめて、同一建物における保険診療の適切/不適切の基準を明示するべきだったのではないでしょうか?
最後に一言。介護のスタッフが、そのきつい仕事内容とそれに見合わない賃金などの理由から、職に定着しないなどという報道を聞くにつれ、今回の改定で医療報酬が減算された分を介護の報酬に回していただければまだ溜飲も下がりますが、もし天下りなんかに回すようなことがあるなら、この国に未来は無いですよ。
(記載、管理医師;佐々木)
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2014年3月15日 土曜日

出アフリカ と 高血圧症(2/2)(尼崎循環器内科医講話)

"出アフリカ"の結果、北に向かったヒトは白人種(コーカソイド)となり、ヨーロッパに定住。一方、東に向かったヒトは黄色人種(モンゴロイド)となり、アジアに広く分布、さらにベーリング海峡を渡って、北米→南米まで生活圏を求めました。アジア人は前回も述べました通り、ナトリウムを体内に保持する遺伝子を "出アフリカ"の過程で徐々に捨てていったと思われますが、日本列島では加えてやや特殊な事情があるようです。この日本の特殊な事情を簡単に(歴史の専門の方からはおおざっぱ過ぎるとお叱りをうけそうですが・・・)説明してみます。 
数万年前、当初、日本列島に住み着くようなったのは、黒潮にのってやってきた太平洋・東南アジア系のアジア人で、彼らのことを縄文人と表現して良いでしょう。その後、約3500年前(?、諸説あるようです)に大陸→朝鮮半島から南下してきて日本列島に住み着くアジア人が現れ、彼らのことは弥生人と表現して良いでしょう。
弥生人は、日本列島に降り立つ前、北方で生活するうちに、ナトリウムを体内に保持する遺伝子を縄文人より早期に捨てていったと推測します。前回、北米の例でも触れましたが、寒帯での生活では、この遺伝子を持つことは高血圧→脳卒中を発症、結局、生存には不利にはたらき、自然淘汰されることになります。したがって、黒潮文化の縄文人がナトリウムを体内に保持する遺伝子を高い確率で持っていたと考えられるのに対して、大陸文化の弥生人がこの遺伝子を持つ確率は縄文人よりは低かったであろうことが推測されます。
弥生人の南下で生じた異文化の出会いは、当初、縄文人と弥生人の間でイサカイをも生み出したようですが、やがて共存→混血も進んでいきます。したがって、もともとの日本列島先住民である縄文人の血(遺伝子)は弥生人によって薄められたとはいえ、日本人はナトリウムを体内に保持する遺伝子を持つヒトが多い民族といえます。
最近は夏もエアコンが快適な環境を提供してくれますので、ナトリウムを体内に保持する遺伝子に起因する食塩感受性高血圧はこれからも増え続けるでしょう。日本の縄文遺伝子を持つ人の高血圧症も米国におけるアフリカ系住民(黒人)の高血圧症と同じ事情なのです。
(記載、管理医師;佐々木)

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